五島三子男・出店久夫 展 《の響音 

  • ※10月28日(日)16:00~ ささやかな、レセプションを行います。
  • 72018.10/25(木)~11/11(日) 13:00~18:00        月火水曜日 休館 入場料 一般 500円(中学生以下無料)

「五島 三子男 会場」

「出店 久夫 会場」

※ 展覧会の様子がパノラマでご覧になれます

   五島・出店 展 によせて 宇フォーラム美術館 館長 平松 朝彦

 この二人展は「海と地の響音」という統一のテーマを持っている。「海」は五島氏の、「地」は出店氏のテーマであろうか。お互いが響きあう不思議な統一感がある展覧会となった。
五島氏は海というか自然がテーマ。葉っぱの版画。たとえば蓮の葉脈を版として版画をつくる。 そもそも線というのは不思議なものである。ピカソの線は誰にも描けないなどというが、自然の線もまた同様に人間にはつくれない。また4枚の銅板を二週間海に沈めて引き上げ、版として紙に刷る。感光させるように感海させて海を撮る。かつて写真をベースのリトグラフを制作していたことも発想の一つなのだろう。
 もう一つは立体のオブジェ。素材は海藻や流木。海藻は矩形や卵型など人工的に固められて作品化される。自然と人工の対比。自然物による立体作品。今回はさらに海藻による高さ幅約4m弱の巨大なカーテンが作られた。そのカーテンの向こうには大きな海(の写真)が見える。バックグラウンドとして海の音が聞こえるようだ。流木というより白く脱色した小枝はやや乱暴に集合してやはり別の形に。
 白いパネルから突き出たり、アルミ缶と一体化したり不思議な造形。それらのオブジェが会場に配置される。今回は、今年採られた昆布の磯の香も濃厚であり、匂いも感じなから中、観客は歩き回ることになる。だから会場に来ないと見たことにならない。
 出店氏の作品の今回の圧巻は新作の幅約5mの「雪轍連面図」と4曲2双の屏風仕立ての「象と少女屏風図」。屏風の裏には論語の紙面が敷き詰められている。
 出店氏はそもそも油絵画家であったが、その絵を描くために、描く対象として写真を利用していたという。写真の焼き付けの仕事をしていたこともあり、このような写真コラージュが始まった。それは一言でいえば想像の場の創造だ。
 その場は、子供、象、きりん、マリア様、何かの石像、様々のジャンク的な放置された機械。さらに不思議な構築物で構成され、雪の轍や、あるいは地球でないどこかの星のような荒涼たる岩山の風景が続く。不条理、不思議な夢の中のような幻想の世界。さらにその特徴は画面の対称性。上下、左右が反転。それは万華鏡のようでもある。
 その構成はマンダラ絵画を感じさせるがこれらの作品は地平線があるために立体マンダラとなっている。そうした面でもイリュージョン。作者はそのイリュージョンこそ絵画だという。
 そもそも絵画の始まりである宗教絵画の天国を描いた絵もイリュージョンであり、画家たちはそれをリアルに描くことが求められた。であれば、写真によるコラージュはそのリアルさでは絵に勝る。洋画家が描いたイリュージョンなのだ。その中にしばしば登場する子供。無垢の子供はそのイリュージョンの中で無心に遊んでいる。それは作者なのだろうか。

会 場 の 様 子
















出店久夫 「コラージュ 2018 雪轍」2018年作 70×103㎝


五島三子男 「浜辺の感触」・Ⅱ2018年作 112×114.3×20.0㎝ 海藻・廃棄物・その他