「5つの様相」(望月 厚介)展の記録

  • 201611月17日~12月4日
  • 会 場
  • 「積層R-B30#4」
  • 「積層R-Y40#4」
  • 「積層R-B30#4の一部拡大」
  • 「「積層R-Y40#3」
  • 「積層R-B30#2」
  • 「積層R-B30#3」
  • ●マテリアル
  •   土佐和紙 シルクスクリーン 2016

            
    ◆ 「積層=LAMINATING」シリーズについてのコメント

     今回の展示のコンセプトは「層=LAYER」
     私はずっと絵画の成り立ちである「平面上に存在する表面性」を考えてきた。
     絵画の持っている表面は、支持体である紙やカンバスであり、その上に描かれた油絵の具やアクリル絵の具、あるいは水彩絵の具などの素材=物質によって成り立っている。
     そして、その表面上のイメージこそが絵画そのものであり、その絵の具のバリエーションが絵画を絵画として成立させているのである。
     しかも、その絵の具は層をなし、あるときは数10回となく塗り重ねられて深みを増す。

     今回の作品も絵の具のブラシに替わって、シルクスクリーンのステンシルで描いている、あるいは刷っている。そして、その行為こそが絵画制作のプロセスであり、目的達成の為の行程であるのだが、最終目的ではなくその行為自体に光を当てる。つまり、描くという行為=パフォーマンスであり、プロセスそのものを提示することによって絵画の成り立ちを検証する、そしてそこに絵画の存在意義を問い直すことにある。
      
                                      望月厚介
    ◆経歴
     1948年静岡県出身

    ●個展
     1993年 「望月厚介グラフィックアート展」矢吹町ふるさとの森芸術の村
            企画展示室(矢吹町・福島県)
     1994年  熊谷守一美術館・ギャラリー榧(池袋・東京)
     1995年 「思考の転写」福島市民ギャラリー(福島市・福島県)
     1996年 「版」展 養清堂リフレクションギャラリー(銀座・東京)
     1997年 「意味なき意味」ギャラリーブロッケン(小金井市・東京)
     1998年 「残された領域」六花亭ギャラリー(帯広市・北海道)
           「皮膚」ギャラリー、イン、ザ、ブルー(宇都宮市・栃木)
     2001年 「表相」ギャラリーブロッケン(小金井・東京)
     2002年 「望月厚介」展ぎゃらりー由芽(三鷹市・東京)
     2003年 「望月厚介」展 たかなし画廊(清水市・静岡)
           「酸化」展ぎゃらりー由芽(三鷹市・東京)
     2004年 「ながす・けずる・する・はがす」展 Gallery 街角(国立市・東京)
     2007年 「IN THE MELTING」展ぎゃらりー由芽(三鷹市・東京)
     2008年 「MELTING」展ぎゃらりー由芽(三鷹市・東京)
           「望月厚介展」 旧菅井小学校 (藤野町・神奈川県)
     2010年 「黒い絵画」展 ぎゃらりー由芽(三鷹市・東京)
           「在ること/無いこと」ギャラリーQコンセプト(銀座・東京)
           「軌跡」展 武蔵野市立千川小学校(武蔵野市・東京)
           「望月厚介」展 Gallery 街角(国立市・東京)
     2011年 「望月厚介」展 羽村市ゆとろぎ美術館(羽村市・東京)
           「熔融」展 ギャラリー・ボンブラ(武蔵野市吉祥寺・東京)
     2012年 「再生―その軌跡」吉祥寺コピス(武蔵野市吉祥寺・東京)
     2013年 「BEYOND THE BLACK」―黒の向こうに ぎゃらりー由芽(三鷹市・東京)
     2014年 「望月厚介」展 相模原市緑区牧野「野山の食堂」(相模原・神奈川)
           「表相→集積」展 宇フォーラム美術館 (国立市・東京)
     2015年 「LAMINATING」積層された形 展ぎゃらりー由芽(三鷹市・東京)

    ●グループ展・公募展
           第3回TAMAうるおい美術展(92奨励賞受賞~95年大賞受賞)             (パルテノン多摩)多摩市/東京
           第1回「URBANART#1」優秀作家展(渋谷パルコ パート3)全国パルコ店
           ミヤコ版画大賞展(スポンサー賞受賞)(ミヤコ画廊)大阪/芦屋
           国際ミニプリント展(92年CASH賞~93年)ナパアートセンター/USA
     1993年 JACA ‘93日本ビジュアルアート展(新宿伊勢丹美術館)新宿/東京
           93‘TAEJON 万国博 国際版画展招待出品 大田/韓国
           ルクセンブルグ日本国際版画展(ルクセンブルグ文化省ホール)
     1994年 第現代日本絵画展(宇部市民ホール)宇部市/山口県
           コンテンポラリーアート協会選抜展(麻布美術工芸館)東京
     1995年 NICAF’95 国際コンテンポラリーアートフェスティバル(パシフィコ横浜)
           第12回 現代版画コンクール(95~98年・大阪府立現代美術センター)大阪  
           CWAJ現代版画展(‘95~’02年・東京アメリカンクラブ)東京
           望月厚介・八木哲平2人展(ギャラリーセンターポイント)銀座/東京
     1996年 第3回さっぽろ国際版画ビエンナーレ(北海道立近代美術館)札幌/北海道
          「環」又は「場」展 (三鷹市民ギャラリー、ぎゃらりー由芽)三鷹/東京
           第10回多摩秀作美術展(‘96年~00年)(青梅市立美術館)青梅/東京
           C、A、F(‘96年、’98年~00年)(埼玉県立近代美術館)浦和/埼玉
     1997年 「PACK UP」八木哲平、上原義春、望月厚介3人展(岩崎博物館)横浜
           バルナ国際版画ビエンナーレ・ブルガリア
     1998年 ‘98ふくみつ記念版画大賞展(部門賞受賞)(福光美術館)福光/福井
           「ななつのモナド」(ギャラリーゼロ)バルセロナ/スペイン
     1999年 第1回 トロワリビエール国際版画ビエンナーレ ケベック/カナダ
           「和紙―12の様相展」(ギャラリーフレスカ)新大久保/東京
           第1回 山本鼎版画大賞展(上田市民ホール)上田市・長野
           エジプト国際版画トリエンナーレ(カイロ美術館)ギザ/エジプト
     2000年 プリンツ21版画グランプリ(ジャポニズム美術館、静岡美術館)静岡
           「日本―現代のビジョン」展招待(スルメールミュゼ)スルメール/南仏
           「アジアン、アートナウ2000」(ラスベガスアートミュージアム)USA
           第1回「学校美術館」(羽村市松林小学校) 羽村市/東京
     2001年 「棘皮者」(岩崎ミュージアム)山手町/横浜
           NAU21世紀美術展(東京都美術館)上野/東京
           第6回 アート公募2001 (アート晴海)東京
     2002年 第2回 ふくみつ記念版画大賞展 (福光美術館)福光市/福井
           あおもり版画トリエンナーレ (青森市民美術館)青森市/青森
           第2回 山本鼎版画トリエンナーレ(上田市民ホール)上田市/長野
           デメーテル連動企画 「SHOW CASE」(帯広ホシビル3F)帯広/北海道
           第5回 高知国際版画トリエンナーレ (井野町紙の博物館)井野町/高知
           第10回 ソウル国際版画ビエンナーレ (SUPACE SOUL)ソウル・韓国
           府中ビエンナーレ連動企画「接近」展(府中美術館市民ギャラリー)東京
     2003年 エジプト国際版画トリエンナーレ(カイロ美術館)エジプト
           アートプログラム青梅
           「温度差7℃」山口啓介、内田あぐり、池田緑、原田丕、望月厚介
           (SAKURA FACTORY/BOX・KIOKU/ギャラリー繭蔵)青梅/東京
           プサン国際版画彫刻祭 招待 (プサン市民ホール)プサン/韓国
           ジョール国際版画ビエンナーレ招待(ハンガリー美術館巡回展)ハンガリー
     2004年 CIGE 中国國際画廊博覧会(国際科技会展中心)北京/中国 
           アートプログラム青梅 「風景の心電図」展
     2005年 CIGE 中国国際画廊博覧会(国際科技会展中心)北京/中国
           アートプログラム青梅「里山と在る」展 
           SIPAソウル国際版画アートフェアー(ハンガラム美術館)ソウル/韓国
     2007年 「PRESENT FOR YOU」わたしからあなたへ/みんなからみらいへ 
           (町田国際版画美術館)町田市/東京
           SIPAソウル国際版画アートフェアー(ハンガラム美術館)ソウル/韓国
     2008年 「棘皮者」パート2 岩崎ミュージアム企画展(岩崎博物館)山手町/横浜
            韓中日国際美術家「別」展 (上海NARANA STUDIO) 上海/中国
     2009年 「IMPRINT」―現代グラフィックアートコレクション/スウェーデ
           「2009 BEIJING SOGO INTERNATIONAL ART FAIR」北京(SOGOデパート)
           CWAJ現代版画展 東京アメリカンクラブ(品川区/東京)
           「TITE OF EXHIBITION」韓中日美術展 (Jungwoo-Gallery)ソウル/韓国
     2010年 第2回 青森国際版画トリエンナーレ(青森国際芸術センター)青森市
           「EDITION」プサン国際版画展(BEXCO)プサン/韓国
           「IBEICAオープンアートコンテスト」最優秀賞受賞(NY・USA)
           第2回 日・韓・中 国際美術家展(福岡県立美術館)福岡/九州
     2011年 ベルギー・日本版画交流展「ひらのはっこうあれじまい」京都市立芸術大学
           「to」BREAK―日本とドイツを繋ぐ展(breklum・ドイツ)
           第16回 セルベイラ国際版画ビエンナーレ(セルベイラ・ポルトガル) 
           第8回 高知国際版画トリエンナーレ (井野町紙の博物館)井野町/高知
           二人展「溶融された二つの次元」岩崎ミュージアム企画 山手町/横浜
           ベルギー・日本国際版画交流展 京都芸術大学ギャラリー@KCUA(京都)
     2012年 第6回 DOURO国際版画ビエンナーレ招待出品(アリジオ・ポルトガル)
           CWAJ現代版画展(東京アメリカンクラブ)東京
           「版の境界線:変容と再生」岩崎ミュージアム企画314回
           (岩崎博物館)山手町/横浜
           第10回 アートプログラム青梅「存在を超えて」展
           (SAKURA FACTORY/BOX・KIOKU/ギャラリー繭蔵)青梅/東京
     2013年 「現在進行形」野外展 (ゆう桜ヶ丘公園)聖蹟桜ヶ丘/東京
     2014年 「アートアイランズ大島国際現代美術展」(波浮港旧甚の丸邸) 大島/伊豆
           「HANGA」(セントニクラス市立美術館) セントニクラス市/ベルギー
     2015年 「日本・ベルギー国際版画交流展」宇フォーラム美術館  国立/東京
           「アートウォーキング国立」郷土資料館展示室  国立/東京
     

    ●主な収蔵先
     町田国際版画美術館、多摩市役所、パルテノン多摩、エジプトカイロ美術館、福島県矢吹町ふるさとの森芸術の村企画展示室、東京羽村市松林小学校、
     極東産業株式会社、横浜富士電機病院、韓国版画協会、ワルシャワ ファインアートアカデミー、帯広六花亭製菓株式会社、農業法人藤野クラブ、
     宇フォーラム美術館、他

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  •   「五つの様相」展に
  •               八 覚  正 大  美 術 評 論 家   寄 稿
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  •  五人の作家が、それぞれの主題を元に己の身心の重みをかけた力強い表現を展開した。
    小品群は一階に常設されつつ、二階では前期後期とに分け大作を展開することによって、作家たちの「リビドー」を実感させるこの館ならではの展示空間が拓かれた。

     望月厚介は、シルクスクリーンの版画家、その積層シリーズなど色相の重厚さを感じさせられてきた。一方、会員展でも見たように光を当てた不思議な物相を輝かせる……それが己の身体のたとえば足の裏とか、だったりする。意表をついたと言おうか。《このところ描くことの意味、刷ることの意味を考え続けている。……毎日飯を喰うように、毎日眠るように、ほとんど同じ行為と思っている》と。今回黄緑色の層の下から黄や赤の層が顔を覗かせる一階の小品群。それとまさに対比させるかのように二階には赤をふんだんに展開した積層シリーズが並ぶ。この一見平穏に見える地表のさまざまな場に、人間の歴史は行為を積み重ね、事件が発生し時には流血をも見た……それを超えてまた時の層は重ねられていく。
     かつて画面の前で作者の思いと手法を聞くことが出来た。その時の積層は、当初斑(まだら)に見えていた程度のものが、対話の中でその十数層も重ねられたというシルクスクリーンのプロセスをだんだんに現わしてきた(敢えてそう言いきる)。芸術作品に込められた意図と思いと、そのプロセスを《対話》という現前する関係行為(敢えて作家と観る側の協働パフォーマンスと呼びたい)の中で、そのような場が「いまここ」に展開されるのを実感したのだ。
     今回はそのような対話は出来なかったのが残念だが、一階の鮮烈な緑と、二階の層を重ねた重厚な赤が、観る側が入っていくという行為の場を充分提供してくれていた。

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       5つの様相
  •                 平 松 朝 彦

    ・望月作品について
     印刷用のインクを30回くらいシルクスクリーンで土佐和紙に刷る作業を繰り返す。下地の色と変えることで様々の模様が浮かび上がる。さらに何度も塗り重ねると、ミクロ的には立体となり絵画性を失い、物になっていく。
  •  作者がこの厚さに求めているのは絵画を超えたモノ、「力」なのではないだろうか。それは赤と補色的な黄色や青との対比でも強調される。これは自分の意志とは違う作品をつくる美術におけるオートマティズムの一つであるが、しかしそれも作者の作品だ。
  •  そして下地と釉の焼き物のように自然に生まれた微妙なディテールの開発は、作者独自のものといえる。
     

  •   ※ 展覧会の様子がパノラマでご覧になれます
  •  「 五 つ の 様 相 」(望月 厚介) 展