丸田恭子・平松輝子 展の記録

      

     丸田恭子・平松輝子 展

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  •    平松輝子と丸田恭子展
                                 八覚 正大

     今回の平松輝子は銀の紙に独特なタッチの作品群。なかなか形容するのは難しく、またその手法も解明しにくい。一つひとつの作品がそれぞれに個性を際立たせている。腐食をつかったもの、墨を用いたもの、その他紙を貼ったもの……というのは簡単だが、その意図、その効果、そしてその為し得たものは何なのか。
     今回とくに腐食を用いた塗りと、円相の描かれたものに惹かれた。一つは背景に雲の動きを表し、黒い太い線の円。その中に模様を秘めた月が悠然と浮かんでいるような。今回一連の作品は「銀河シリーズ」と名付けられている。このような作品は実はかつて宇フォーラム美術館の二階の床面を埋め尽くすほどの量が描かれていて、館長も実際に床に並べその中からこれといった作品を選び出したとのこと。
     最も惹かれたのは、流れる銀河の中に眼のような円があり、近づいてさらに右に左に身体を動かし視点を移動させてみると、その都度生きた煌めきが感じられる、それはどうもダイヤモンドの粉を用いているらしいのだ。一つの視点から撮られる写真では引きだし得ない作品の輝き、少し離れてみるとまた顔が浮き出たような感も。作家の行為の軌跡に観る側もまた関わって対峙する、その鑑賞の姿勢にこそ応えてくれる絵画群だ。大作とは言えないにしろ、その銀河の流れのスケールと何重かの円による眼の煌めきこそ、その手法と作為を越えて生まれた表現の持つ偶有の美を感じさせる。
     一方、丸田恭子の画はその旋回するタッチの速さと黒い線に囲まれた白い面や立体の鮮烈さにあると言えるだろう。こちらもなかなか形容し難いが、一人の画家が描く等身を越えた迫力がある。分かり易さから言えば、「出会い」と唯一意味的に名付けられた二つの瓶が口を近づけ液体を移し替えるような画がある。実は薬学部出身の丸田の学生時代の経験がその中にあるのかもしれないが、瓶そのものが旋回するタッチで描かれ、かなり動的な感覚だ。
     今回は小品群もあり、瓶の中に配線が組み入れられたようなコンパクトな感じのものも初めて見た。一方大作に属する何点かの、前述した黒い旋回する線とそれに囲まれて膨らむ白い、縦あるいは横の空間は堂々たる〈丸田舞踏〉を感じさせる。その中で以前見た横長の大作、その大胆さに混じるピンク色の愛らしさが、高速で回転し駆け抜けて行った作品群に落ち付きのようなものをもたらしている。
     ここに生み出されている、どこか三次元を軽く超え出たような感覚は、いったい作者のどこからくるのだろうか。おそらくそれを描く時(ジャクソン・ポロックを連想もするが)、無意識の深層から湧き出す高速の円舞のような動きをふんだんに用い描き切ったのではないかと推測される。
     その迫力と、黒い線と、円相、意図・計算など越えた偶然性……を取り入れた感覚、それらがある意味この二人の祈祷・舞踏の妙を感じさせる画家に共通する〈何か〉かもしれない。
     
  •    丸田恭子・平松輝子展 
  •                    平松 朝彦
     丸田恭子さんは薬科大を卒業後、ニューヨークの名門アートステューデントリーグで学んだという異色の経歴。当時デ・クーニングのところに遊びに行き、ついでに(?)自分の作品を見てもらったところ、デ・クーニングは歓迎してくれ、さらに作品を褒められたというエピソードも納得。さらにロスアンゼルスに滞在していたころ画家マイク・金光さんと知遇を得たという。「風神雷神」という大作があるが偶然にも平松輝子も同名の作品を描いた。等々、不思議なほど平松輝子と共通点がある。(平松もデ・クーニング、マイク氏と知遇を得て「風神雷神」を描いた。)テーマは素粒子、素時間というミクロの物理現象に美を見出す。
     平松輝子は銀紙の上に墨で書かれた銀河シリーズを展示する。丸田さんとは反対のマクロの世界。星は夜空に輝く。輝く星をどう描くか。一つは金や銀の絵具を使う方法。もう一つはメタリックの素材の上に描く方法。今回の絵画は後者の例だが、この方法(いわばメタリックアート)で宇宙を描いた人はいるのだろうか。ダイヤの粉粒が虹色にきらめく作品もある。当館に「univers」なる洋書の写真集があるがそれらを見ると宇宙には様々な姿がある。その本の銀河の写真を見て、今回の銀河シリーズを見ると、その宇宙の姿が類似していることに驚く。もちろんこれらの作品を描いた30年前にこうした写真はほとんどなかったろう。銀紙の表面を腐食させ錆びさせたる表現。さらに窯変のように虹のように色がついているものもある。それらはもはや他者には理解できない秘密の技法である。絵とは「描く」ものだとするとこれらの絵は「描いた」ものではなく絵といっていいのかもわからない。さらに銀紙は対抗する空間を映してしまうため、写真を撮ることすら困難。我々の目は絵の空間をさまよう。
  • 2017/3月26日〜4月16日
      
        オープニングパーティー
        3月26日 16:00〜18:0






















 














三 次 元 の 波 動  110×80

銀 河 シ リ ー ズ  220×80

銀 河 シ リ ー ズ  110×80

銀 河 シ リ ー ズ  80×110

平  松  輝  子

丸  田  恭  子

「浸透#4」 227×146

部分クローズアップ

「出会う」 117×117

「N-2」 227×163

「浸透#3」 227×146

「P-1」 193×130 3枚

「浸透#1」 227×146

「N-1」227×163

会 場 の 様 子

※ 展覧会の様子がパノラマでご覧になれます