菅野 美榮・桝本 純子 展の記録

  菅野 美榮・桝本 純子 展

            2019/3月28日~4月14日

Junko Masumoto 「森へ」

Yoshie Kanno 「ねむり姫 Sleeping princess」

※ 歌:RYNCO、作品:菅野美榮「ねむり姫」

※ 展覧会の様子がパノラマでご覧になれます























 

       「森へ」     宇フォーラム美術館  館 長 平松 朝彦

 

 

 森、をテーマとした二人の展覧会。
 まず会場の手前の桝本純子さんの作品。右手の幅約7m高さ約2.6mの大作と左手は約2.8mのオブジェの大作にはさみうち。グリム童話に登場するような魔法使いか怪物の住む森?。
 最近ではむしろCGで作られる魔物の姿か。桝本さんは、とある森を彷徨いインスピレーションを得るという。具体的には気の遠くなるほどの綿の結束糸、ロープ、綿などが神社の注連縄のよう巻かれて、よられて。絞められたり解放されたり。
 よく見ると流木や金属の矢じりのようなものも。人工的なようで自然なような。作為があるような、ないような。複雑な組織はまさに巨大な生き物のようでもある。それらが会場の壁に吊るされ、強烈な存在感を放っている。
 下からのライトもあったが、光を放ち美しい。部屋の突き当りには半円形の黒い金属によって構成されたオブジェ。近くで見ると黒の鉄が溶断、溶接されていて荒々しい。
 上からライトを当てられ床に円形の影。遠くから見ると巨大な蜘蛛のようで動き出しそう。力強くて繊細。屋外には金属製の12の蓮の葉と実が当館の入り口から中庭にかけて4か所に散らばるように設置された。
 蓮は昔から宗教的にシンボルとして使われる。インドでは神聖な花であり、仏教では泥水の中から生じ、清浄で美しい花を咲かせる姿が極楽浄土の象徴とされる。当館の中庭の4月の春の花とコラボレーションされてなんとも天上の景色。


 次に奥の部屋の菅野美榮さん。まずは突然光のカーテンのような空間が現出することに驚く。光に見えたのは数えきれないほどの多くの絹糸に蜜蝋が塗られて光る水の雫のように見えるから。それはまた、雨がふっている様を高速度カメラで写したようでもある。
 そのカーテンの中には1.8m×0.9mの長方形の細い金属の枠があり、その上になにやら丸くて透明なものがたくさんうごめいている。数えると約20×約50、種子だから生きている約千個のタンポポの種子が、丸いまま0.9mの空中に浮かんでいる。
 天井からの光は空中に浮遊している丸い宇宙のような種子を透過し、床に影はできない。
作者の説明ではタンポポはベッドで寝ているというのだが、光のシャワーは儚いタンポポを守っているかのようだ。風が吹かない限りタンポポは永遠に寝ているのだろう。また、白色のガラスのオブジェも2点あるが、それにもタンポポの種が。これほどの危く儚い作品はあるだろうか。
 今回の二人の作品のイマジネーションはすばらしい。われわれ人間は地球上で主役のような顔をしている。しかし森では人間は主役ではない。
 たんぽぽが咲いて種子を飛ばす。また森の奥では蓮の花が人知れず花を咲かせる。それは神がつくった仕組みであり、そのもの。だから人間はそっと神に出会いに森へいくのだ。
 今回のインスタレーション。見た人は皆感銘を受けたに違いない。訪れたRYNCOさんがアカペラで独唱してくれ、それがユーチューブにアップされた。

Exhibition ー 森へ(To the forest) ー
Yoshie Kanno & Junko Masumoto