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多摩地区でアートプロクラム青梅などの現代美術展を主宰しているベテラン。
150号の大作や2枚合わせた300号が壮観を超えて圧巻。「江戸期10数戸、現在2戸が定住する小集落「大荷田」がある。そこを水源とする大荷田川のせせらぎが多摩川に注がれている地点でもある。
トウキョウサンショウウオが生息する小さな泉の傍らで、夕刻時、秋の嵐で倒れた大杉の根元から見上げると、無言の宇宙がぽっかりと口を開けている。天上と地表と地底を垂直に貫く。」
■略 歴
1944 群馬県生まれ
1968 東京学芸大学美術科卒業
1996 文化庁芸術家在外研修(ドイツ、スペイン)
■主な個展
1990 ギャラリーセンターポイント/東京
1991 たましんギャラリー/東京
1995 シロタ画廊/東京
1998 羽村市芸術家展/東京
2005 調布画廊/東京
2006 紀伊国屋画廊/東京
■主なグループ展
1986「裸婦大賞展」(東京セントラル美術館/東京)
1987「油絵大賞展」(東京セントラル美術館/東京)
「上野の森美術館絵画大賞展」(上野の森美術館/東京)
1990「第18回日本国際美術展」(東京都美術館/東京)
1991「21世紀の視座91展」(/大阪)
1992「西多摩の絵画精鋭展」(青梅市立美術館/東京)
「第26回現代美術選抜展」(文化庁/)
1993「安井賞展」95賞候補(西武美術館/東京)
1999「第28回現代日本美術展」佳作賞91,95賞候補(東京都美術館/東京)
2005「DOMANI明日展」(文化庁/)
2013~16「アートプログラム青梅」青梅市立美術館/青梅)
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- 「五つの様相」展に
- 八 覚 正 大 美 術 評 論 家 寄 稿
五人の作家が、それぞれの主題を元に己の身心の重みをかけた力強い表現を展開した。
小品群は一階に常設されつつ、二階では前期後期とに分け大作を展開することによって、作家たちの「リビドー」を実感させるこの館ならではの展示空間が拓かれた。
原田 丕(はじめ)は、今回大作をいくつも出していた。会員展の作品は暗い画面に花弁が散っているような印象だけだったが、こうして大作を見ると沈んだ色調から、大きな爆発(ビッグバンのような)、あるいは沈み逼塞した洞穴から水の層を超えて大空を希求するような。さらに「少年と杜」という三百号の大作は、会員展の時の大荷田(青梅の奥の地名)の世界をいっぱいに展開したような迫力がある(話を直接聞く機会があったが、神戸の事件を皮切りに様々な少年たちの暗い心を里山よりさらに自然に近い杜(もり)に投影したということ。そして作者自身も幼い頃都会から移り住んだその空間で孤立感を抱いた時期があったと)。色調がどの作品にも通底している……そこに作者の生きてきた、また創作への大きな足場があるようにも思える。
もっとも印象的だったのは、「7月の青い果実」と題された空中に浮揚した果実の下半分が腐り崩落したような作品だ。それはあらゆるすそ野を断ちきって山だけが空中へ飛翔して行くかのような情念を強く感じさせる(作者の言によると、外でふと拾ったカリンの実を置いたまま二年が経過したとき、腐りもせずぎゅっと凝縮されたその感じに創作欲を湧かせたと)。不思議な絵画群だ。江戸期十数戸、現在二戸が定住する小集落「大荷田」が居処とのこと。敢えて言えば、大きな情から出発しその意を、この宇フォーラムの空間に爆発させた迫力を感じさせた。
- 5つの様相
- 平 松 朝 彦
・原田作品について
多摩地区でアートプロクラム青梅などの現代美術展を主宰しているベテランによる150号の大作や2枚合わせた300号が壮観を超えて圧巻。
- 「江戸期10数戸、現在2戸が定住する小集落「大荷田」がある。そこを水源とする大荷田川のせせらぎが多摩川に注がれている地点でもある。トウキョウサンショウウオが生息する小さな泉の傍らで、夕刻時、秋の嵐で倒れた大杉の根元から見上げると、無言の宇宙がぽっかりと口を開けている。天上と地表と地底を垂直に貫く。」
多摩地区の自然は豊かだ。作者はサンショウウオが穴から眺めた天空をイメージするが、誰もが井伏鱒二の「山椒魚」なる小説を思い出すだろう。狭い穴に取り残されたサンショウウオの話だ。それは自分と社会との関係を擬人化した寓話でもある。
- 今回そのストーリーとこの絵のつながりはわからないが、地域に生きる人たちの諦観、感慨なのかもしれない。私も多摩の田舎(?)に生まれて60年以上。地元民として理解できないこともない。
- 「7月の青い果実(2015)」サイズ163×130