「5つの様相」(小林 ナオコ)展の記録

  • 2016/11月17日~12月4日
  • 「循 環 2016-Ver.2」(Circulation 2016-Ver.2)
  • 「循 環 2016-Ver.2」
  • タ・マ・ガ・ワ
  • タ・マ・ガ・ワ
  • タ・マ・ガ・ワ
  •  ●マテリアル
      伊豆大島の波浮港の海水を煮詰めて作った塩、
        水、ポリエチレン、LEDなど
      作品サイズ、 2.2m×2.4m 高さ1.03m

     ◆コメント

      もう一度、波浮の港を漂う夢。

     2011以降、毎年、夏、伊豆大島の波浮地区で開催される展覧会があり、展覧会のために通うようになりました。
     東京からこんなに近いのに、自然あふれる、空気がきれいなところです。
    私は、よく海辺に行きます。

     今年の5月、伊豆大島の波浮の港で50リットルの海水を汲み、府中の自宅でそれを煮詰めて塩を作りました。
     
     ◆略歴

      1960 東京都出身
      1983 女子美術大学卒
         東京都府中市在住

     ●グループ展
      2011 滝沢アートフィールド(相ノ沢キャンプ場/盛岡市)
      現在進行形野外展(原峰公園/多摩市)
      波浮港国際現代美術展(旧波浮小/大島町)
     2012  波浮港国際現代美術展(旧波浮小/大島町)
         国際野外の表現展(東京電機大学/埼玉県比企郡)
     2013  アーチストセンター展(東京都美術館)
         滝沢アートフィールド(相ノ沢キャンプ場/盛岡市)
         現在進行形野外展(原峰公園/多摩市)
         我孫子国際野外美術展(宮の森公園/布佐市)
     2014  アーチストセンター展(東京都美術館)
         アートアイランズTOKYO(椿公園/大島町)
          精神構造物 小林ナオコ×高島芳幸(SPCギャラリー/茅場町)
     2015  DFWAE アーチストインレジデンス(アルドゥド城ギャラリー/ルーマニア)
         精神構造物 小林ナオコ×坂牛幹雄(SPCギャラリー/茅場町)
         現在進行形野外展(原峰公園/多摩市)
     2016  アーチストセンター展(東京都美術館)
         アートアイランズTOKYO(旧波浮小学校/大島町)


     ●個展
     2010  Emergence-出現-(四谷ランプ坂ギャラリー)
     2011  Specimen-標本-(ギャラリー檜Plus/京橋)
     2013   Specimen II-標本II-(ギャラリー檜Plus/京橋)
     2014  標本-中津川-(ギャラリー彩園子/盛岡市)


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  •   「五つの様相」展に
  •               八 覚  正 大  美 術 評 論 家   寄 稿
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  •  五人の作家が、それぞれの主題を元に己の身心の重みをかけた力強い表現を展開した。
    小品群は一階に常設されつつ、二階では前期後期とに分け大作を展開することによって、作家たちの「リビドー」を実感させるこの館ならではの展示空間が拓かれた。

     小林ナオコは、一階にさり気ないメッセージ性のある作品を十五個展示してあった。多摩川の河原で拾った流木に彩色し、それを一つずつ透けるトレース用紙の封筒に詰めて並べたものだ。流木との偶然の出会いに己が関わり、それをまた誰かに送るような(ガラス瓶に手紙を入れ海に流すような、強い憧れと不特定への拡散――よりは穏やかな)。分かりやすく、そして控えめな優しさ、ユーモア。中身は予感予測させはするが明確には見えず、手紙のような言葉が書かれているわけでもない。ただ受け取ってみたい気がするのだ。《ほんの少し気持ちがプラスに動くためのスイッチや、違う時空にトリップするための入り口のような作品を作りたいと思っている》と。
     後期に二階に展示された「循環2016-Ver.2」と題された作品は、大きな魅力を秘めて一瞬でこちらを惹きつけた感がある。それは望月厚介の赤いシルクスクリーン群を超えた場に白い光の街として浮かび上がっていた。宝石、ガラス?……小さな四角い結晶が何百も静寂の輝きの中に犇(ひし)めいている。近寄るとビニールで作られた少しずつひしゃげた数センチの箱、その中に海水(伊豆大島波浮港で採取)が入っていたのだ。一度乾燥させて塩にしたものを東京に持ち帰り塩水に戻し使っているそうな)それは少しずつ水を蒸発させ、塩の結晶をつくりだしはじめたものもある。
     ああ、これは集落だと感じさせる。それぞれの箱は家だ。その屋根はなく大気と繋がっている。そのそれぞれに溜まった海水は、各個のもつ財なのかもしれない。大きく開いた家、ねじれてあまり開いていない家、蒸発して財の少なくなったもの、たっぷりと溜まったままのもの……さまざまな連想を引きだされた四百数十戸の集落。それは作家の中に住まわれていて、作家もまたその中に住んでいるのだ。
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  •    5つの様相  
  •              平 松 朝 彦

    ・小林作品について
     海水を塩水に還元した循環と題されたインスタレーション。具体的な今回の展示は、透明のビニール袋に水が入っていて、水分が乾燥により蒸発すると水に溶け込めなくなった塩分が結晶となる。海水は水蒸気となり山にあたると急激に冷やされて雨になる。雨のメカニズムはミクロ的にはまだよくわかっていないともいわれるが、地球は海がある青い惑星なのだと思いをはせる。
     しかしこの展示のテーマは光だと思わざるをえない。作品の下部のLEDライトにより透明のビニールとともに水が光り、塩の結晶もきれいに観察できる。展示空間を暗くすることでそうした光が群れとなり輝く光景は息を飲む。

  •   ※ 展覧会の様子がパノラマでご覧になれます
  •  「 五 つ の 様 相 」(小林 ナオコ) 展